「寄生虫」──そう呼ばれたのは、台湾の現職大統領だった。2025年4月1日、2日と大規模な軍事演習を行った。陸・海・ロケット部隊が一体となり、台湾を囲む形で動き出した。演習の発表とともに、中国政府は台湾の現職大統領 頼清徳総統を“寄生虫”とまで侮辱した。
同日4月2日に、ドナルド・トランプ大統領がまるで狙ったように”相互関税”が発表された。一律10%、中国には34%、そして中国の報復関税にアメリカが反応して瞬く間に145%へ上昇した。
台湾総統を侮辱しつつ軍事演習を展開した中国。そしてその翌日、トランプの関税発表。 中国はまるで“蜂”のように動き回り、経済的包囲網を逆に築こうとしている。
“途上国の味方”を演じる中国──抗議と連携の二面作戦
4月7日、中国外務省は「経済的いじめ」「典型的な保護主義」と、アメリカの姿勢を非難。 「グローバルサウスの発展を妨げる」とし、途上国全体を味方に引き込もうとする姿勢を見せた。
さらに14日から17日にかけて、習近平国家主席はベトナム・マレーシア・カンボジアを歴訪し、「自由貿易体制を守ろう」と呼びかける。
一方で、20日には新任の駐米大使が“報復の用意”があるとしつつも、対話の可能性も示唆。
台湾に向けた「演習」という名の示威行為の直後に、「一方的ないじめ行為に反対しよう」と訴えている。
──さて、誰が本当にいじめをしているのだろうか?
自ら放ったブーメランが後頭部に突き刺さっているかのような状況だ。
トランプ政権1.0──中国の「受動」の始まり
2017年:様子見フェーズ
トランプ大統領就任。
4月:習近平主席が訪米しマールア・ラゴで米中首脳会談
11月:トランプ大統領が訪中し北京で米中首脳会談
→なんなら友情ムードすらあった
【中国側】
→ アメリカを刺激しないよう低姿勢。表向き歓迎モード。
2018年:本格的な米中貿易戦争スタート
3月:鉄鋼・アルミに高関税を課す
7月:中国製品に25%の追加関税
その後も段階的に拡大
【中国側】
→ 報復関税(アメリカ製品・農作物に関税)で応戦。
2019年:対立激化→禁輸・規制合戦へ
5月:米国がHuawei(ファーウェイ)禁輸措置発表。
12月:第1段階の米中貿易に一部合意
【中国側】
→対米不信感が強まる。
→中国商務部が「信頼できないエンティティー・リスト」制度を策定
2020年:コロナショック&米中対立さらに悪化
1月:第1段階合意。
春頃:新型コロナウイルスの感染拡大。
秋頃:TikTokやWeChatなど中国IT企業への制裁も発表。
【中国側】
→急速に「デカップリング(経済切り離し)」対策を強化。
→ アメリカ市場への依存度を下げる施策を本格化。
そして2025年──全く同じ構図が繰り返されている
こうして振り返ると、トランプ政権1.0(2017〜2020)と、現在進行中の2.0における米中関係は、同じ軌道の上にあることがわかる。
最初こそ「友好的な出会い」で始まったが、関税、禁輸、経済制裁と、段階を踏んで対立は深まり続けた。
そして今、2度目の政権下でトランプは、さらにあからさまに、「敵味方を選別する経済戦争」へと踏み込んでいる。
だが、一連の中国に物足りなさを感じるのはなぜか?
- 台湾を軍事演習で威嚇 → だが世界は慣れきっている
- トランプの関税発表に対し → 「いじめだ」と非難するだけ
- ASEAN歴訪 → 包囲網を築く力には至らない
- 報復関税 → 規模もインパクトも薄い
すべてが、“後追い”でしかないのではないだろうか?
「自国から積極的に構造を変える」
「未来の枠組みをリードする」
──そういった能動性はどこにも見られない。
かつて世界の工場として席巻した中国は、今やただの「リアクティブ国家」へと姿を変わりつつある。
不動産バブルが弾け、ゾンビ銀行が蔓延し、経済はかつての爆発的成長から、“縮小と延命”の段階に入った。
中国は、経済構造だけでなく、「国際社会における振る舞い」まで日本化しつつあるのかもしれない。
言動までどこぞの日本の政治家のいう「誠に遺憾である」に似ている。
まとめ:中国は何も変わっていない
台湾をめぐる軍事演習、米中の関税応酬、そしてASEANへの静かな浸透。
いま中国が見せている動きは、かつてのような爆発的な成長や大国らしい自信とは異なる。
むしろ、複雑な国際環境を前に、“どちらの側に立つのか”を各国に問いかけながら、自らの生存圏を確保しようとしているように見える。
トランプ政権1.0の時代から、中国はただ“耐え”、ただ“反応し”、ただ“受け流す”ことしかできなかった。トランプ政権2.0の到来は、明らかにこの動きに拍車をかけた。
未来を変えるには、過去を超えるしかない。だが、2025年の中国には、まだその兆しは見えない。
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